葬儀保険を検討する際、多くの人が気になるのが「掛け捨て」という言葉の響きではないでしょうか。支払った保険料が戻ってこないことに対し、どこか損をしたような気持ちになるかもしれません。しかし、葬儀保険がなぜ基本的に掛け捨て型を採用しているのか、その「からくり」を理解すると、それが合理的で理にかなった仕組みであることが見えてきます。保険という金融商品の本質は、多くの人が少しずつお金(保険料)を出し合い、大きな共有の準備金を作り、その中から、実際に不幸に見舞われた少数の人に対してまとまったお金(保険金)を支払うという「相互扶助」の精神にあります。葬儀保険もこの原則に則っています。貯蓄性を持たせず、解約返戻金や満期保険金をなくすことで、保険会社は保障機能に特化したシンプルな商品を設計できます。これにより、月々の保険料を可能な限り低く抑えることができるのです。もし、葬儀保険に貯蓄性を持たせようとすると、保険会社は保障のための費用に加えて、将来支払う返戻金や満期保険金を積み立てるための費用も保険料に上乗せしなければなりません。そうなると、当然、月々の保険料は高くなります。葬儀保険の主な目的は、高額な貯蓄をすることではなく、比較的少ない負担で、万が一の際の高額な葬儀費用に備えることです。掛け捨て型にすることで、この目的に最も効率よく応えることができるのです。例えるなら、火災保険や自動車保険と同じです。私たちは、火事や事故が起こらなかったからといって、支払った保険料が無駄になったとは考えません。それは、万が一のリスクに対する「安心」という価値を得ていたからです。葬儀保険も同様に、遺族に金銭的な負担をかけずに済むという「安心」を、月々の保険料で得ていると考えることができます。もちろん、一部には貯蓄性を備えた商品も存在しますが、その分保険料は割高になります。掛け捨てであることのデメリットばかりに目を向けるのではなく、そのおかげで得られる保険料の安さというメリットを理解し、自分の目的に合っているかどうかで判断することが重要です。