葬儀後の手続きにおいて、役所や医師が発行する公的な書類が中心となる一方で、葬儀社が独自に発行する書類も重要な証明書の役割を果たすことがあります。これらの私的な証明書が、どのような場面で、どの程度の効力を持つのかを理解しておくことは、手続きをスムーズに進める上で役立ちます。葬儀社が発行する代表的な証明書としては、「葬儀施行証明書」や「請求書・領収書」が挙げられます。まず「葬儀施行証明書」ですが、これはその名の通り、葬儀社が依頼を受けて葬儀を執り行ったことを証明するために発行する書類です。通常、故人の氏名、喪主の氏名、葬儀の施行年月日、場所などが記載されています。これは、特に家族葬などで会葬礼状を作成しなかった場合に、その代替書類として非常に有効です。会社の忌引休暇の申請や、一部の共済金の請求手続きなどで、葬儀の事実を証明する書類として広く認められています。次に、「請求書」や「領収書」です。これらは本来、費用の支払いに関する書類ですが、記載内容によっては証明書として機能します。例えば、喪主の名前が宛名として記され、但し書きに「故〇〇様ご葬儀代として」といった具体的な記述があり、葬儀の日付や場所が確認できれば、これもまた葬儀が執り行われた客観的な証拠となります。特に、相続税の申告において、葬儀費用は債務として遺産総額から控除することができます。その際、実際に支払った費用を証明する根拠資料として、葬儀社発行の領収書は必須の書類となります。ただし、これらの書類はあくまで葬儀社という一企業が発行する私的な文書です。そのため、死亡の事実そのものを公的に証明する力はありません。生命保険金の請求や、不動産の相続登記、銀行口座の解約といった厳格な本人確認や死亡確認が求められる手続きでは、原則として使用できません。これらの手続きには、死亡診断書や戸籍謄本(除籍謄本)といった公的書類が必要となります。葬儀社発行の証明書は、日常的な手続きや社内手続きを円滑にするための補完的な役割を担うものと理解しておくと良いでしょう。
葬儀社発行の証明書でできる手続き