心を込めて準備した、通夜振る舞いや精進落としの弁当。しかし、弔問客の数が予測より少なかったり、食が進まなかったりして、どうしても、いくつかの弁当が手付かずのまま、余ってしまう、という事態は、葬儀において、しばしば起こり得ることです。故人を偲ぶための、大切な食事。これを、ただ廃棄してしまうのは、あまりにも忍びなく、また、もったいないことです。では、余ってしまった葬儀の弁当は、どのように扱うのが、最も適切で、心のこもった対応なのでしょうか。まず、最も一般的な方法は、葬儀を手伝ってくれた「親族や、親しい友人たちに、持ち帰ってもらう」というものです。二日間にわたり、悲しみの中で、受付や接待といった、心身ともに疲れる役割を担ってくれた方々は、帰宅してから、食事の準備をする気力も残っていないかもしれません。そんな時、「本当に助かりました。よろしければ、夕食の足しに、これを持って帰ってください」と、余った弁当を渡すことは、非常に温かい、感謝の気持ちの表現となります。きっと、喜んで受け取ってくれるはずです。また、葬儀を滞りなく進めてくれた「葬儀社のスタッフの方々」に、お渡しする、というのも良いでしょう。彼らもまた、朝から晩まで、立ちっぱなしで、食事を取る時間もなかったかもしれません。「皆様も、お疲れ様でした。もしよろしければ、召し上がってください」と、労いの言葉と共に差し出すことで、感謝の気持ちが、より深く伝わります。ただし、これらの場合、注意しなければならないのが「衛生面」です。特に、夏場の暑い時期は、長時間、常温で置かれていた弁当は、食中毒のリスクが高まります。持ち帰りを勧める際には、「大変申し訳ないのですが、本日中には、必ずお召し上がりくださいね」と、一言添えることを、絶対に忘れないようにしましょう。もし、それでもなお、弁当が余ってしまった場合。あるいは、衛生的に、持ち帰りを勧めるのがはばかられるような場合は、残念ながら、廃棄せざるを得ません。その際には、故人への感謝と、食べ物への感謝の気持ちを込めて、「お父さん、ごちそうさまでした」と、心の中で手を合わせてから、処分するようにしましょう。そのささやかな行為が、故人への、最後の供養となるはずです。