人が亡くなった際に発行される書類の中で、後々のあらゆる手続きの根幹をなす、最も重要と言えるのが「死亡診断書」です。法的には「死体検案書」と区別されることもありますが、一般的にはこれらを総称して死亡の証明書と認識されています。この一枚の紙が持つ法的な力と、その後の手続きにおける重要性は、計り知れません。死亡診断書は、死亡の事実を医学的かつ法律的に証明する唯一無二の公文書です。医師のみが作成でき、故人の氏名、生年月日、死亡した日時と場所、そして死因などが詳細に記載されています。この書類がなければ、その人の「死」は社会的に確定せず、その後の手続きを一切進めることができません。まず、市区町村役場に「死亡届」を提出する際に、この死亡診断書の原本を添付する必要があります。これを受理されて初めて、その方の戸籍が抹消(除籍)され、同時に火葬や埋葬を行うために必要な「火葬埋葬許可証」が交付されるのです。つまり、死亡診断書がなければ、故人を弔うための最初のステップである火葬すら行うことができません。その重要性は、葬儀後さらに増していきます。生命保険金の請求、遺族年金や未支給年金の請求、預貯金口座の解約や名義変更、不動産の相続登記、自動車の名義変更など、故人の財産に関わるほぼすべての手続きにおいて、死亡の事実を証明するために、この死亡診断書のコピーや、死亡の事実が記載された戸籍謄本(除籍謄本)の提出が求められます。特に、手続き先が複数にわたる場合、その都度コピーが必要になるため、役所に原本を提出する前に、必ず複数枚コピーを取っておくことが極めて重要です。この一手間を怠ると、後から証明書が必要になるたびに、法務局で「死亡届記載事項証明書」といった代替書類を有料で取得する手間と費用が発生してしまいます。葬儀前後の慌ただしさの中で忘れがちですが、この死亡診断書こそが、故人がこの世を去ったという事実を社会に伝え、遺された者が次の一歩を踏み出すための、すべての扉を開ける鍵となるのです。
死亡診断書は最も重要な証明書類です