現在の葬儀業界を見渡す上で避けて通れないキーワードが「M&A(合併・買収)」であり、この動きが活発化している背景を理解することは、有望な銘柄を選定する上で極めて重要です。日本の葬儀業界は長らく、家族経営の小規模な葬儀社が地域ごとに割拠する分散型の市場構造でしたが、経営者の高齢化に伴う後継者不足や、葬儀単価の下落による経営環境の悪化により、単独での生き残りが難しい事業者が急増しています。こうした状況下で、資金力のある上場企業が受け皿となり、地方の有力な葬儀社を次々と買収してグループ化する動きが加速しており、これが株価を押し上げる大きな要因となっています。買収を行う側の上場企業にとっては、新たなエリアへの進出時間を短縮できるだけでなく、被買収企業の顧客基盤や人材、会館をそのまま引き継ぐことができるため、即座に売上への貢献が見込めるというメリットがあります。また、仕入れの共通化やバックオフィス業務の統合によるコスト削減効果、いわゆるシナジー効果も期待でき、利益率の改善に直結します。投資家としては、M&Aに積極的な銘柄に注目すべきですが、単に買収件数が多いだけでなく、買収後の統合プロセス(PMI)がうまくいっているかどうかもチェックする必要があります。買収した企業の社風や従業員のモチベーションを維持しつつ、グループ全体の理念を浸透させる経営手腕が問われるからです。例えば、きずなホールディングスなどは独自のM&A戦略で成長を続けており、地域ごとのブランドを尊重しつつ効率化を図る手法で業績を伸ばしています。一方で、無理な買収を繰り返して有利子負債が膨らみすぎている企業や、のれん代の償却負担が利益を圧迫している企業には注意が必要です。業界再編はまだ道半ばであり、今後数年から十数年にわたって大手による寡占化が進むと予想されますが、その勝者となる企業を見極めるためには、M&A戦略の明確さと財務の健全性、そして買収によって得られたリソースをどう活用しているかという定性的な情報を読み解く力が求められます。再編の波に乗る銘柄への投資は、業界地図が塗り替わるダイナミズムを享受できる醍醐味があると言えるでしょう。